心の感動

植物が地中から鉄分を吸収しているプロセス

鉄 137億年の宇宙誌          2009年(平成21年)11月3日(水)
                             東京大学総合研究博物館

 地殻中の元素の約5%を占める鉄は、土壌中には大量に存在する。しかし、畑土壌では、鉄は水酸化第二鉄のような水に溶け難い3価の鉄として存在しているために植物は利用することができない。土壌中の難溶性の鉄を吸収して利用するために植物は大きく分けて2つの鉄獲得機構を進化的に発達させてきた。
       還元戦略 と
       キレート戦略 である。
 イネ科以外の植物は、3価の鉄を2価鉄イオンに還元して可溶化して吸収する還元戦略をとる。
 これに対して、イネ、ムギ、トウモロコシなど、主要な穀物が属するイネ科の植物は、キレート物質であるムギネ酸類を根から分泌して、土壌中の3価鉄を水に溶けやすいキレート化合物にして「3価鉄・ムギネ酸類」のままで吸収するキレート戦略をとっている。

 鉄が多様な局面で生命に使われている理由は2つ挙げられる。
 一つは、鉄が多くの化学物質と配合結合を作りやすく、生命にとって重要な多くのキレート化合物を作ることが可能であることである。

 また、鉄は環境によって2価(還元型)または3価(酸化型)のイオンになるが、鉄の化合物は電子を受け取ったり(還元)、電子を放出したりする(酸化)ことを安定して繰り返すことである。

 それ故に、生体内における
酸化還元反応
呼吸によるエネルギー産生
植物の光合成 
などに必要な電子伝達が可能なわけである。

 植物が生きるために鉄が必須――私達人間を含めて地球上のほぼすべての生物は、生命活動に必須な金属元素として鉄を必要としている。

鉄は細胞内のミトコンドリアにおけるエネルギー産生など、生命体に必須の諸機能の活性中心で作用しており、鉄がなければ地球上の生命体は生きることができない。
Iron vital to plant and animal life
今から1億年くらい前の白亜紀と呼ばれる時代に地球は最も暖かい時代を迎えていた。大型の陸上動物が出現し、恐竜が繁栄していた。ところが、およそ6500万年前に、一説には隕石の衝突による影響で、多くの生命が絶滅し、この繁栄に急に終止符が打たれる。その激動の時代を哺乳類が生き延びた。

 哺乳類は酸素を吸って生活している。私たちも含む哺乳類は、栄養物を酸素と反応させることによって、生存のために必要なエネルギーを得ているのだ。興味深いことに、この目的のために鉄は2つの中心的な役割を果たしている。
 1つ目は、体内に取り入れられた酸素を体の隅々まで行き渡らせること
 2つ目は、エネルギーを生成する上で電子の効率的な伝達を行うことである。
 
 実は、こうして鉄がエネルギー生産に重要な役割を果たしているのは、哺乳
類だけではない。

 拡散だけで生体内の輸送が間に合う小さな生物を除けば、あらゆる生き物に
おいて体のさまざまな部分へ酸素を輸送し、エネルギーを得るという意味で同
一の仕組みが必要なのだ。

 それどころか、光合成反応であっても、これに類似した経路で、しかし光エ
ネルギーを用いて、逆に進んでいる。つまり地球上のほぼ全ての生命体におい
て、鉄は重要な役割をはたしているのだ。

 生物が鉄を利用するようになった理由として鉄の2つの性質があげられる。
すなわち多くの化学物質と配位結合しやすく、キレート化合物を作れることと
環境に応じて酸化還元反応(電子の授受)を安定的に行えることである。

 鉄は、二価(還元型)または三価(酸化型)のイオンになるが、土壌環境に
よっては植物が吸収し難い三価イオンとして存在している。そのため、植物は
土壌中の鉄をとりこんで利用するための戦略を進化的に発達させてきており、
イネ科の植物からは三価の鉄をキレート化合物にするムギネ酸類と呼ばれる物
質が見つかっている。

 一方、動物は血液によって酸素を運搬し吸収しているが、我々ヒトを含む多
くの動物の血液が赤く見えるのは、赤血球中にへムタンパク質であるヘモグロ
ビンが含まれているからである。

 鉄は生物個体にとって重要なだけではなく、広く地球・海洋システムにおい
ても鉄を用いて知ることが可能である。海洋上で鉄を散布する実験により海洋
植物プランクトンの増減においても鉄が重要であることが明らかにされてきた。

              東京大学
                農学部 生命科学研究科 酵素学研究室

























   筆記者: 信川忠道     千葉県浦安市弁天2-27-8
        電話・FAX  047-353-1628
メールアドレス: t.nobukawa@jcom.home.ne.jp
    
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by t-nobukawa | 2010-03-18 17:22
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