心の感動

竜馬とお金

日経ビジネスから

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龍馬から学ぶ“お金の教育”

2010年4月1日(木)
坂本龍馬はお金の使い方の天才である。
幕末の偉大な実業家といえば、坂本龍馬と言っても過言ではない。龍馬は亀山社中(のちの海援隊)という貿易会社を結成し、倒幕側にトーマス・ブレーク・グラバーが設立したグラバー商会を通じて武器の輸入をおこなったり、犬猿の仲であった薩摩藩と長州藩を経済面での連携により和解に導き、薩長同盟を締結させたことで明治維新に大きな影響を与えたのは誰もが知るところである。一介の浪人がここまで成し遂げた実業家としての優れた金銭感覚は、子どもの頃のお金の教育にあると思われる。
龍馬は、天保6年に現在の高知県高知市に土佐藩下級武士の坂本家の二男三女の末っ子として生まれた。土佐藩には、武士階級に上士と下士に分けられ、両者にはかなりの格差があったようである。
坂本家は下士であったが、呉服屋、酒造、質屋などを営む豪商の分家で多額の財産を所有する裕福な家庭であった。位は下であってもお金があることでひもじい思いをせずにすむことは家庭環境の中で実感していたはずである。
商売人の家系から考えると坂本家では、お金に対する厳しい教育がなされていたことも想像できる。それに龍馬の母は12歳のときに死亡し、その後、父の後妻に養育されたが、後妻の実家も藩の御用廻船商人だったので同様にお金の話を普段から耳にしていたに違いない。ちなみに両家に家訓があったかどうは確認できないが、例えば、「三方よし(売りてよし、買いてよし、世間よし)」のような近江商人に伝わる家訓のようなものがあり、お金の意味をよくわかっていたのではないかと推測する。
龍馬が、たびたび訪れて人格形成に影響を受けたと言われる後妻の実家では、自分の知らない海の向こうの話を聞くことができ、世界に憧れを抱いたと言われている。世界地図をはじめ、様々な輸入品を見ることで想像豊かな感性を持つことができたのであろう。
商売人の遺伝子に加え、お金があることの有利さを実感し、未知なる世界を見聞きすることで夢を描くことができる環境にあった。そして、親や家族がこの時代で生き抜くために必要な知恵や心得、そのひとつでもあるお金の使い方について愛情をこめて根気よく伝えたと考えられる。
龍馬は、決して優秀な子どもではなかった。幼少時は、臆病な上、意気地がなく泣き虫で寝小便が治らないダメ小僧だった。
漢学の塾に入学した時、いじめにあって、上士の子の抜刀騒ぎに巻き込まれた際、龍馬の父が「龍馬にも罪がなかったとは言えない」と塾を辞めさせた。無用ないざこざを嫌い、えこひいきをしないという坂本家の家風がしのばれる。その後、龍馬の指南役となった三歳年上の姉は、武芸十八般の上、様々な習い事に精通していたと言われ、武道はもちろん、学問の指導にもあたった。そして、このダメ小僧が、数年後には「日本を洗濯致し申し候」と世の中を変える行動にでるのである。独自の家庭環境の中で贅沢と質素を理解し、「お金は幸せや夢をつかむための道具。しかし、使い方を誤ると不幸になる」そんな金銭感覚を養っていったのだろう。
龍馬にはこんな逸話がある。土佐藩では、長刀をさすことが藩士の間で流行っていたときに龍馬は短めの刀をさしていた。その理由を聞くと「実践では短い刀のほうが取り回しがよい」と答えたことに納得した友人が短めの刀をさすようになった。次に会ったときには、懐から拳銃を出して「銃の前には刀なんて役にたたない」と言ったので友人はまたもや納得し拳銃を買った。その後、再会したときに拳銃を見せたところ万国公法(国際法)の洋書を取り出して「これからは世界を知らなければならない」といわれ、友人はもうついていけないと思ったそうである。
理にかなったモノの持ち方である。言い換えれば、時代に沿った合理的な賢いお金の使い方ともいえる。
どういう場面でどのようにお金を使えば効果的なのか。「日本を洗濯致し申し候」とういう夢を実現させるため、亀山社中の結成や薩長同盟の締結などに賢くお金を使っているのである。
現在、お金を増やす人が注目される社会であるが、本来は、坂本龍馬のように賢くお金を使える人が尊敬される社会にならなければならない。
龍馬とお金の関係を独自の視点で解明してみたが、今の時代も夢や目標を達成するためにはお金が重要になってくるのはかわらない。
子どもに「お金の話は汚いものだ」とタブー視してお金の教育をおこなわないのはナンセンスである。こんな時代だからこそ、平成の坂本龍馬の出現のために行動するぜよ!


 このコーナーは、日経マネー本誌やTV、新聞等でもおなじみの著名ファイナンシャル・プランナー各氏が毎週交代で執筆する辛口コラムのコーナーです。今の金融界をズバッと斬る直言から金融制度や消費者への提言、最近の金融ニュースの注目ポイント、またFPならではの役立つノウハウまで、幅広い内容を取り上げていきます。更新は毎週水曜日です。
いちのせかつみ

市野瀬トータルコンサルタント代表者。平成15年に金銭教育普及のために自転車で日本縦断。現在、テレビ・ラジオへの出演、講演会や執筆等でも活躍中。
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by t-nobukawa | 2010-04-12 11:32
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